阿久津皇議員
一時保護所を委員会と会派で視察しました。夕方は狭い居住スペースに多くの子どもがおり、切実な訴えもありました。日中は明るい印象でしたが、そもそも子どもが寝泊まりするために造られた建物ではありません。職員の事務や休息の場所も含め、施設が限界に近いと感じます。定員に対する現在の入所状況を教えてください。
児童相談所長
一時保護所の定員は、男子12人、女子8人、幼児6人の計26人です。入所人数は日々変わりますが、2月末時点では男子12人、女子9人、幼児2人の計23人でした。開設当初は定員を超える日がほとんどありませんでしたが、一昨年度から超過する日が増えています。
阿久津皇議員
全体では23人ですが、学童女子は定員8人に対して9人で、厳しい状況です。児童相談所と子ども家庭支援センターへの虐待相談は、令和2年度の2,608件から令和6年度の3,547件へ、約36%増えています。相談の増加に伴い、保護や措置が必要な子どもも増える可能性があります。
一時保護所が満員であることが、子どもを保護するか家庭へ戻すかという判断に影響してはなりません。常に一定の余裕を持たせ、一時保護を担える里親も確保する必要があります。区長は現状をどう考えていますか。
区長
区の一時保護所は、児童相談所とともにコロナ禍の始まりに開設し、6年目を迎えています。従来の集団処遇に人権上の問題があったことから、原則個室とし、食事などもユニット制にする工夫をしました。定員に余裕がある間は機能しましたが、他区から措置された子どもを受け入れる場合もあります。
施設は開設時から新しくなく、応急的に整備した面があります。定員を超える中で、廊下やキッチンだった場所まで居室にせざるを得なくなりました。当初の想定と異なり、幼児より年長児や中高生が多く、職員の負担、離職、勤務体制の不足なども生じました。
現在の施設を継続しながら、過密状態をできるだけ早く改善する具体策の計画を始めています。保護された子どもが安心でき、職員がゆとりを持って子どもに接する体制を整えます。
阿久津皇議員
着実に進めてください。社会的養護は、集団的な養育から家庭的な養育へ移行し、里親家庭で育てる方向が重視されています。国は里親委託率について、未就学児75%、学童期以降50%を目標としています。区内の里親登録は現在どのような状況ですか。
子ども・若者部長
区内の里親家庭は96家庭です。このうち、養子縁組を目的とせず一定期間子どもを育てる養育家庭は65家庭で、いずれも特別区の児童相談所の中で最多です。昨年12月末時点で、子どもを委託されている家庭は24家庭、委託児童数は32人です。
児童相談所の開設後、里親家庭は増えています。しかし、里親と子どもの組合せの可能性を広げ、必要な子どもが里親家庭で育てられるようにするには、登録数をさらに増やす必要があります。
阿久津皇議員
特別区で最多でも、人口規模を考えれば、まだ大幅に不足していると考えます。日本財団の調査を基にすれば、国内には潜在的な里親候補が約100万世帯あり、欧米では応募者の約10%が実際に登録されるとされています。人口比で考えると、世田谷区にも1,000家庭以上の候補がいる可能性がありますが、養育家庭は65家庭です。
里親が増えない大きな理由として情報不足が挙げられています。経済的支援や短期委託など、生活に合わせた里親の形があることを知らせる必要があります。ストックホルムでは広報の専門職員を置き、目を引くポスターやコピーを使っています。デュッセルドルフでは実際の里親家庭の写真を使っています。区も人の意識を変えられる広報を行うべきです。現在の取組を教えてください。
子ども・若者部長
多くの人が、日常生活の中で自然に里親制度の情報を目にする環境が必要です。区は令和5年度から、里親子フレンドリーシティを目指し、世田谷線のラッピング電車、里親自身が企画・制作に参加した動画、バスの車体広告などを行っています。
令和8年度からは子ども・若者基金を活用し、5年間にわたり制度の周知と里親拡大を進める予定です。世田谷線のラッピングを複数年度で展開し、区内5地域を年度ごとに重点地域として、駅広告など生活動線に密着した周知を行います。紹介された事例も参考に、里親支援センターと協力して、世田谷の地域特性に合う啓発を進めます。
阿久津皇議員
子ども・若者基金を使って広報を強化するなら、専門のデザイナーやコピーライターも活用してください。「泣いてもいいよキャンペーン」や「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」のような訴求力のある事例も参考にし、様々なメディアで里親の充実に取り組むことを求めます。
フェアスタート基金は、令和7年度1月末時点で寄附額が7,900万円、給付額が1,800万円で、6,000万円以上が残っています。累計残高は3億6,000万円で、毎年5,000万円以上が積み上がる状況です。支援対象を広げてきた一方、必要な人に情報が十分届かず、基金を活用し切れていないのではありませんか。
子ども・若者部長
今年度から対象を広げ、生活支援課、子ども家庭支援課、児童相談所など、虐待などの逆境体験があり、親族の支援を受けられない若者が相談する可能性のある機関へ情報提供し、連携を強めました。その結果、相談段階を含め、フェアスタートにつながる事例が徐々に増えています。
高校、児童館、青少年交流センターなどにも周知し、支援機関から必要な若者へつないでもらうよう働きかけています。今年度新設した社会的養護自立支援協議会でも情報提供し、理解と連携を求めています。来年度は、せたエールによる伴走型支援と関係機関との連携をさらに強め、必要な若者へ情報が届くよう取り組みます。
阿久津皇議員
給付額は令和6年度から7年度にかけて増えたとしても、寄附の増加に追いついていません。寄せられた厚意を子どもたちへ十分還元できていないと考えます。
現在の条例では、給付対象を児童養護施設などを退所した個人に絞っていると理解しています。基金を活用し切れないのであれば、社会的養護を受けた子どもの自立に役立つ取組や施設にも使えるよう、条例改正を含めて対象を広げる必要があるのではありませんか。
子ども・若者部長
児童養護施設退所者等奨学・自立支援基金は、条例に対象と使途を定め、これまでも段階的に事業を拡充してきました。令和7年12月の社会的養護自立支援協議会では、生きづらさを抱える若者や親を頼れない若者について、金銭管理、住まい、伴走型支援の重要性などを議論しました。制度拡充は対象者の進路支援に着実に役立っていると考えています。
一方、寄附が積み上がっている現状は認識しています。来年度は当事者も参加する児童養護施設退所者等支援事業検討会を開き、利用者の需要と制度本来の目的を踏まえ、必要な支援をさらに展開することなどを検討します。
阿久津皇議員
現行の枠組みでは、寄附を十分な支援につなげられません。条例の対象を抜本的に広げることを検討してください。
日本で社会的養護を受ける子どもは1,000人当たり1.8人とされています。これに対し、ドイツは9.7人、スウェーデンは10.4人、カナダのブリティッシュコロンビア州は11.4人、米国と英国も5人以上です。日本でも今後、欧米に近い水準となり、一時保護を含む需要が現在の5倍ほどに増える可能性も考える必要があります。親子への支援とともに、親と暮らせない子どもを受け止める社会的養護の受皿を拡充してください。